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PHP extension 写経 - var_dump編 その2 integerとfloat、string、resource

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今回実装する場所。これは現master

もくじ

このstudy_extensionはGitHubにおいてます: https://github.com/youkidearitai/study_extension

dump関数2

前回では、boolとnullを出力できるようにしたので、今回はintegerとstring、resourceと実装しよう。

Integer(LONG)を追加する

今回は、前回の続き。次のswitch文に記述を続けていく。

switch(Z_TYPE_P(struc))
{
    case IS_NULL:
        php_printf("NULL: null\n");
        break;
    case IS_TRUE:
        php_printf("BOOL: true\n");
        break;
    case IS_FALSE:
        php_printf("BOOL: false\n");
        break;
    default:
        php_printf("UNKWOWN\n");
        break;
}

次はIntegerを追加していこう。次のcaseを追加する。

    case IS_LONG:
        php_printf("LONG: " ZEND_LONG_FMT "\n", Z_LVAL_P(struc));
        break;

php_printf関数というのは、printf関数とほぼ同じように使えるため、%dとかが使える。第二引数に実際の値を入れていく。printfと同じと思えばそう読めると思う。

しかしながら、なぜこうなっているのかという、疑問点がわいてくるのではないか。

  • php_printfとは何か
  • ZEND_LONG_FMTとは何か
  • Z_LVAL_Pとは何か

php_printfとは何か

このphp_printfを追いかけていくと、Zend/zend.cのzend_vsprintfという関数にたどり着く。この関数はzend_utility_functions構造体のprintf_to_smart_string_functionにたどり着く。これは関数ポインタなので、それを更に追いかけていくとmain/spprintf.cにphp_printf_to_smart_string関数へとたどり着く。xbuf_format_converterという関数が、実際に処理を行っている関数となる。

そして、vspprintf関数の処理が終わったらPHPWRITEマクロで出力される。とりあえずは、ざっくりこのような形で良いでしょう。

ZEND_LONG_FMTとは何か

php_printfではprintfのように使っても特に問題はないので、次のように書いても問題がないようにみえる。

    case IS_LONG:
        php_printf("LONG: %ld\n", Z_LVAL_P(struc));
        break;

しかし、これをMacでコンパイルするとWarningが出るはずである。これを回避するためにはプラットフォームごとに変換指定子を変える必要があるけど、それはもともとZEND_LONG_FMTを使うことで解決できるというわけである。

また、C言語の文字列リテラルを区切り文字を続けると文字列はコンパイル時に連結される。

Z_LVAL_Pとは何か

今までの知識からわかることとして、php_printf関数の第二引数として見れば、これは実際の値であることがわかる。strucはzval構造体へのポインターであることがわかる。そのzval構造体を読んでみると、実際の値はzend_value構造体であることがわかる。そこにあるlong型の値はlvalで確保されている。

Z_LVAL_Pはマクロなのでそれを参照するとこうなっている。

https://github.com/php/php-src/blob/php-7.4.4/Zend/zend_types.h#L678

#define Z_LVAL(zval)                (zval).value.lval
#define Z_LVAL_P(zval_p)            Z_LVAL(*(zval_p))

つまり、Z_LVAL_P(struc)は展開するとこうなる

*(struc).value.lval

Float(double)を追加する

Integerを追加したのだから、Floatを追加するのも想像はつくだろうか。

PHPの浮動小数点は倍精度だけどFloatと名付けられている。Cの倍精度浮動小数点はdoubleである。また、php-src上ではIS_DOUBLEとなっている。

    case IS_DOUBLE:
        php_printf("DOUBLE: %.*G\n", EG(precision), Z_DVAL_P(struc));
        break;

もちろん、やはり疑問点は出てくる。こんなものだろうか?

  • EG(precision)って何?
  • php_printfの%.*Gって何?

EG(precision)って何?

まず、EG(precision)とはなんなのかというと、zend_executor_globalsという構造体のprecisionのことで、main/main.cにはPHP_INI_MH(OnSetPrecision)という関数がある。

PHP_INI_MH(OnSetPrecision)

PHP_INI_MHはphp.iniの設定をする関数でOnSetPrecisionを検索すると、PHP_INI_ENTRYがある。これをもとにphp.iniの設定をする。なければデフォルト値の第二引数を設定する。

PHP_INI_ENTRY("precision",                  "14",       PHP_INI_ALL,        OnSetPrecision)

つまり、php.iniの設定であるprecisionを設定すると写経しているこの関数も、var_dump関数も変わるということになる。試してみよう

$ php -r 'var_dump(3.3); ini_set("precision", 17); var_dump(3.3);'
float(3.3)
float(3.2999999999999998)

3.3は2進数では表現がしきれないため、14桁のデフォルトでは3.3と表示されるのだが、17桁になると3.2999999999999998となり、18桁では3.29999999999999982となる。

php_printfの%.*Gって何?

php_printf関数の%.*Gは何なのか。xbuf_format_converterを見てみる。

  • .はprecision。次の文字が数字ならばその数字がprecisionになる
  • *はint型の引数を受け取り、precisionとする
  • EG(precision)が引数となっているので、php.iniのprecisionが桁数となる
  • Gは指数表示のEを表示させる。gの場合はeを表示させる

そこから、php_gcvtという関数に渡される。この関数が実際に浮動少数点数を文字列に変える関数に渡す。

Stringを追加する

文字列も出力できるようにしよう。

        case IS_STRING:
            php_printf("STRING: value=\"");
            PHPWRITE(Z_STRVAL_P(struc), Z_STRLEN_P(struc));
            php_printf("\", length=%zd\n", Z_STRLEN_P(struc));
            break;

PHPWRITEというマクロは、文字列を出力するのにかんたんに出力できる関数。php_printfと比べると処理数が少ない。また、PHPの文字列は、バイナリセーフであるので、C言語で終端文字として使われる\0(NUL)が使われることもある。その関係だと思うけど第二引数には文字の長さを指定する必要がある。

その後のphp_printfでは、文字列の長さを出力させている。%zdとは、zが引数をsize_tで受け取ることを要求させる。次のdで数値を要求させる。これによって長さを出力できるわけだ。

zval構造体の文字列

文字列の扱い方はzval構造体ではどうなっているのだろう?

zval構造体ではzend_value構造体のzend_string構造体へアクセスする。

zend_stringはZend/zend_types.hで次のようになっていて、今PHPWRITEで使っているのがlenとvalだ。

struct _zend_string {
    zend_refcounted_h gc;
    zend_ulong        h;                /* hash value */
    size_t            len;
    char              val[1];
};

lenが長さである。valがその文字列となる。しかしおかしいことに気がつくだろうか。val[1]となっていて明らかに短いのでは?と思うかもしれない。これはC struct hackと呼ばれているテクニックで、サイズが明確に指定されていない配列になる。

このzend_stringのvalを文字列としてgdbで読もうとするとこうなる。

>>> p &(*struc.value.str.val)

参考

Resourceを追加する

リソース型を出力できるようにしよう。

        case IS_RESOURCE: {
            const char *type_name = zend_rsrc_list_get_rsrc_type(Z_RES_P(struc));
            php_printf("RESOURCE: id=%d type=%s\n", Z_RES_P(struc)->handle, type_name ? type_name : "Unknown");
            break;
        }

これをコンパイルして、次のようにコードを書いてみる。すると、以下のように出力されるはず。

$ sapi/cli/php -r 'study_extension_dump(tmpfile());'
RESOURCE: id=4 type=stream

zend_rsrc_list_get_rsrc_typeとは、関数の中身を見るとlist_destructorsというHashTableをひたすら走査して検索している。これは一体なんだろう。zend_rsrc_list_dtors_entryが何かヒントあるだろうか。どうやらzend_register_list_destructors_ex関数で登録しているようだ。

zend_register_list_destructors_exをgrepしてみる。

$ grep -rl 'zend_register_list_destructors_ex' ext/
ext/com_dotnet/com_persist.c
ext/com_dotnet/com_wrapper.c
ext/curl/interface.c
ext/dba/dba.c
ext/enchant/enchant.c
ext/fileinfo/.libs/fileinfo.o
ext/fileinfo/fileinfo.c
ext/fileinfo/fileinfo.o
ext/ftp/php_ftp.c
ext/gd/gd.c
ext/imap/php_imap.c
ext/ldap/ldap.c
ext/mysqli/mysqli.c
ext/oci8/oci8.c
ext/odbc/php_odbc.c
ext/openssl/.libs/openssl.o
ext/openssl/openssl.c
ext/openssl/openssl.o
ext/pdo/.libs/pdo.o
ext/pdo/pdo.c
ext/pdo/pdo.o
ext/pgsql/pgsql.c
ext/pspell/pspell.c
ext/shmop/shmop.c
ext/snmp/snmp.c
ext/soap/soap.c
ext/sockets/sockets.c
ext/standard/.libs/file.o
ext/standard/.libs/proc_open.o
ext/standard/.libs/user_filters.o
ext/standard/file.c
ext/standard/file.o
ext/standard/proc_open.c
ext/standard/proc_open.o
ext/standard/user_filters.c
ext/standard/user_filters.o
ext/sysvmsg/sysvmsg.c
ext/sysvsem/sysvsem.c
ext/sysvshm/sysvshm.c
ext/xml/.libs/xml.o
ext/xml/xml.c
ext/xml/xml.o
ext/xmlrpc/xmlrpc-epi-php.c
ext/xmlwriter/.libs/php_xmlwriter.o
ext/xmlwriter/php_xmlwriter.c
ext/xmlwriter/php_xmlwriter.o
ext/zip/php_zip.c
ext/zlib/.libs/zlib.o
ext/zlib/zlib.c
ext/zlib/zlib.o

extの下ではいろいろなextensionがzen_registe_list_destructors_exを利用している。main/streams/streams.cを見てみると、こうなっている。

int php_init_stream_wrappers(int module_number)
{
    le_stream = zend_register_list_destructors_ex(stream_resource_regular_dtor, NULL, "stream", module_number);

streams.cはmain.cで使われるようだ。デバッガでsapi/cli/phpを走らせてもここを通る。

>>> bt
#0  php_init_stream_wrappers (module_number=0) at /home/tekimen/src/php-src/main/streams/streams.c:1695
#1  0x0000000008573b29 in php_module_startup (sf=0x9406cc0 <cli_sapi_module>, additional_modules=0x0, num_additional_modules=0) at /home/tekimen/src/php-src/main/main.c:2301
#2  0x00000000086f1ff6 in php_cli_startup (sapi_module=0x9406cc0 <cli_sapi_module>) at /home/tekimen/src/php-src/sapi/cli/php_cli.c:407
#3  0x00000000086f41c1 in main (argc=2, argv=0x963b470) at /home/tekimen/src/php-src/sapi/cli/php_cli.c:1323

ひとまず、このようにデストラクタを登録されて、そのときに使用する第三引数のtype_nameをdumpするときに使うようだ。

これで今回おわり

次はarrayを追加し、ついでに参照を追加できれば。

そういえば

Markdownで記述してるのですが、それのビューワーをわざわざ作りました: https://github.com/youkidearitai/tekitoh-na-md-viewer

view部分にこのサイトの下書きを入れとくので良かったらウォッチしてね

2020/05/12 2:51